エンジニアのセンスとスピード感を磨く方法

大切なのはセンスとスピード感、若手エンジニアに役立つチップス

「盛る」本能と、エンジニアの「もうすぐできます」という嘘について。

 人間であれ動物であれ、「自分を大きく見せたい」「優位に立って選ばれたい」とアピールすることは、生存本能としてきわめて自然な衝動だ。孔雀が美しい羽を広げて己を誇示するように、私たちも言葉や実績を少しばかり「盛る」ことで、自分を良く見せようとする。
世間を騒がせる学歴や経歴の詐称ニュースを見ても、最初から「大ペテン師になってやろう」と悪意に満ちてスタートしたケースは意外と少ないのではないか。最初は「まさか自分が、後から調べられるほど偉くなるとは思わなかった」というような、ほんの軽い気持ちの「盛り」が始まりだったはずだ。今の時代、調べれば一発で真実が分かってしまうリスクがあるにもかかわらず、人はその場の誘惑に抗えない。
この「軽い気持ちの嘘」は、私たちが身を置くエンジニアリングの現場でも、実にグラデーション豊かに、そして日常的に発生している。


エンジニアの現場で見る「3つの嘘のステップ」
技術と事実に向き合うはずの現場において、心理前プレッシャーや見栄から生まれる嘘には、決まった転落のステップがある。
 1. 実績がないのに「ある」と言う
案件を勝ち取りたい時、あるいは技術的に優秀だと思われたい時、経験したことのない領域に対して「やったことがあります」「任せてください」と言ってしまう。
「これから必死に勉強して追いつけばセーフ」という、本人なりの前向き(で信じられないほど見通しの甘い)な算段が、嘘の引き金を引く。
2. 出来もしないのに「もうすぐできる」と言う
進捗確認のミーティングでよくある光景だ。実際には手をつけていなかったり、技術的な壁にぶつかって完全にスタックしているにもかかわらず、「あ、それならもうすぐ終わります」「今ちょうどやってます」と答えてしまう。
その場の気まずさから逃れたい、無能だと思われたくないという、まさに「軽い気持ちの嘘」の典型例である。
3. バレそうになり、別の嘘でごまかしを繰り返す
最も苦しいのがこの最終段階だ。前段階でついた嘘の帳尻を合わせるために、「急に別のバグが発生しまして」「仕様の確認に想定外の時間がかかっていて」と、新たな言い訳を急造する。
嘘が嘘を呼び、気づけば当初の何倍も巨大化した「嘘の雪だるま」が、自分の目の前に立ちはだかることになる。
なぜ、技術の現場で嘘をついてはいけないのか
これらの嘘は、どれもスタートは「小さな見栄」や「その場の保身」に過ぎない。しかし、エンジニアリングの世界において、これらは最終的に必ず破綻するようにできている。
理由はシンプルだ。「成果物(動くものや数値)は嘘をつかない」からである。
歴史や技術のデータ、あるいはソースコードは、どれだけ言葉で飾ろうが、最終的には冷徹な「ファクト(事実)」として目の前に現れる。どれだけ「もうすぐできる」と言い張っても、検証フェーズになれば、動かないものは1ミリも動かない。
そして、嘘をつくことの本当の恐ろしさは、信用を失うことだけではない。「嘘の辻ざまを合わせ続けるために、莫大なエネルギーと脳のリソースを消費してしまうこと」にある。
本来、技術的な課題解決やクリエイティブな思考に向けるべきエンジニアの貴重な集中力が、「どう言い訳するか」「どうやってごまかすか」という後ろ向きな工作に浪費されてしまう。これはプロフェッショナルとして最大の損失と言わざるを得ない。
結び:等身大でいるコストの低さ
「できません」「まだやっていません」と白旗を上げるのは、その瞬間はとても格好悪いし、プライドも傷つく。
しかし、「今の自分にできること・できないこと」を正確に開示するエンジニアの方が、長期的な信頼の複利は圧倒的に大きくなる。最初の「盛り」の誘惑に負けず、事実をフラットに共有できること。それこそが、実は最も脳のコストパフォーマンスが高く、結果として自分自身を最も安全に守る最強の防壁になるのだ。