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心の無駄遣い

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心には容量がある。無限ではない。スマホのバッテリーや財布の中身のように、どんなに使い方を工夫しても、無駄遣いすればあっという間に底をつく。そして、その貴重な容量を浪費していることに、我々はなかなか気づけない。


たとえば、他人の目を気にする行為。これは、心の無駄遣いの代表格だ。なぜなら、他人の目というものは多くの場合、自分の頭の中が作り出した幻想だからだ。周りの人たちは思ったよりも自分のことを気にしていない。なのに、「どう見られているか」を考え始めると、それだけで心のエネルギーはどんどん消耗する。


次に、他人と自分を比べること。これも典型的な無駄遣いだ。他人の「見せたい部分」だけを見て、自分の全てと比べるなんて、不公平なゲームを自分で仕掛けているようなものだ。他人の人生と自分の人生は交わらない別々の物語。なのに、我々はつい「自分はダメだ」と思い込んでしまう。これでは勝手に自分を疲れさせているだけだ。


さらに、自分ではどうしようもないことに囚われる。天気、過去の失敗、他人の態度や意見……。こうしたものにエネルギーを注いでも、何も変わらない。それどころか、自分がもっと大切にすべきものへの注意が奪われるだけだ。


また、「こうあるべき」「こうするべき」という考えに縛られるのも、心のムダだ。「この歳ならこれをやっていなきゃ」とか、「こう言った自分は失敗だった」などの後悔や義務感が頭を占めると、心の中に本来の自分のペースを見失ってしまう。


最後に、小さな失敗を引きずること。誰も覚えていないような過去のミスを、まるで古いビデオテープのように何度も再生し続ける。これもまた、心のエネルギーを消耗する行為だ。大切なのは、失敗を糧にすることであって、過去にとどまることではない。


理想はこうやって理路整然と語れるのだが、現実はそう簡単ではない。頭ではわかっていても、つい他人の目を気にしたり、過去の後悔を引っ張り出してきたりしてしまうものだ。だから、まずは「余計なことを忘れてしまうくらい集中できる何か」を見つけるのが一番いいのだろうと思う。


それが読書でも散歩でも、料理でも筋トレでもいい。何かに没頭している間は、雑念なんて入り込む隙もないからだ。気がつけば心の無駄遣いは減り、バッテリーは少しだけ長持ちするようになる。これが、無駄を減らすための現実的な一歩かもしれない。