ベンダー(売り手側のこと)が、よく出してくるデビエーションの説明は、「〇〇◯はベンダースタンダードです」の文言です。
ベンダースタンダードとは、ベンダーが標準的に採用している設計や材料のことで、自動車のような機械で考えると、買い手の要求によって仕様を毎回変えているのでなく、すでに設計は出来上がっているのです。自動車の場合は、買い手に選択の余地を残して、エンジンの大きさや色や、多数のオプションを用意して、他社に客が取られないようにしています。
簡単に言うと、売り手側に買い手が合わせています。デビエーションの概念はありません。これがベンダー(製造者側)から見たら理想です。
生産効率とコストを考えたらベンダーは限りなく少品種大量生産が理想です。
一般大衆向けの商品の場合は、納期とコストが第一なので、買い手は売っているもので我慢をします。ただ売り手側も他社との競争があるので、できるだけ幅広い客層を捕まえるために、品種は増やしていきます。それでも客の要求を個別に聞いて設計を毎回変えているわけではありません。
一方、危険が伴う原子力・石油ガス設備に使う機械や材料の場合は、素材購入や製造過程から細かな品質管理が必須のため、事前に計画生産がされません。
機械の場合は、各種の機械別に業界標準規格が国際(アメリカ主体ですが)的にありますので、それに対応した機械としてベンダーが注文を受けて製作をしています。
機械は数千の部品を組み合わせてできているので、同じ用途であってもメーカー毎に設計・製造・テストの思想は異なり、業界標準規格に対して異なる点(デビエーション)が多数あります。
これら異なる点(デビエーション)が全て認めれば、メーカーとしては自分のいつもと同じ手順で仕事を進められるので、それを申し出てきます。
出てくるデビエーションの中に、「〇〇〇はベンダースタンダードです」と単純に書かれてくることがよくあります(実際にはもう少し書かれていますが、内容が不親切でわからない)。
デビエーションを受け取り判断する方としては、ベンダースタンダードと言ってもそれはどんなもの何か、元々の要求と何が違うのか説明が無いと認められないのでクラリフィケーションをすることになる。その結果、ベンダーの説明が下手なので、最終的にはベンダーは諦めて要求を受け入れることになる。
経験豊富な買い手であれば、重要な箇所でなければ詳細を確認しなくともベンダースタンダードでOKと言ってくれます。世の中、どの業界もそうだと思いますが、良き時代のベテラン達は引退してしまったのです。
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ベンダースタンダードを通すにはどうしたら良いか。
1. どうして要求通りにできないのか、できなくてもどうして問題がないのか、実績もあげてわかりやすく書く。それを最初から書いておくこと。議論を深めるとやれば要求どおりできるでないかとなる。そうならないように最初の記述で理解してもらえるように書く。
2. 要求の通りではないが、別案があるならそれをだす。複数別案があるなら、複数の中ら選んでもらうように仕掛ける。買い手が主導を持っているように。
3. 全体の設計がパッケージングとして完成しているので、それを一部でも変更することは、反対に問題を引き起こすことにもなり、コストや納期に大きく影響するとやんわりと脅す。
4. 全体の設計がパッケージングのカタログなりプレゼンを早い時点で行い、いかにベンダーのスタンダードデザインを採用した方が、顧客にもメリットがあることを擦り込んでおく。
5. 上記3と4のためには、全体の設計がパッケージングをちゃんとしておかないとできないので、それがないなら3と4はできない。
6. 理不尽や間違った要求でなければ、大概は要求の通りできるものなので、現時点の設計をフレキシブルに対応できるような準備もしておくこと。
それと、説明者の技量で通るデビエーションも通らなくなるので、説明者の人選は大事です。
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