むかしむかし、森の会社に猿課長とうさぎ社員、亀社員がいました。
ある日、猿課長は仕事を部下に振ろうとしました。重要な案件はうさぎに、誰でもできる雑用は亀に任せることにしました。
「うさぎに雑用を頼むと面倒だが、亀なら断らないからちょうどいい」
そう思った猿課長は、コピー取り、掃除、会議の準備、議事録作成、宴会の幹事、雑用すべてを亀に押しつけました。
亀は「仕事だから仕方ない」と思い、黙々とこなしましたが、自分の本来の仕事は進まず、毎日遅くまで残業するようになりました。
一方、うさぎはどうでしょう。
猿課長が「ちょっと手伝ってくれ」と言うと、うさぎは「それは課長の仕事では?」と時にはピシャリと断ります。
さらに、猿課長が理不尽な指示を出したとき、うさぎは眉をひそめ、時には鋭い口調で言いました。
「そのやり方は間違っています」
「そんなの納得できません」
周囲の社員たちは、「うさぎは時々怒ることがある」と知っていたので、無茶なことを押しつけようとはしませんでした。理不尽なことには怒る、というイメージがあるだけで、無駄な仕事を振られなくなるのです。
やがて、亀は疲れ果て、ついに倒れてしまいました。
亀がいなくなった会社は大混乱。雑用をやる者がいなくなり、猿課長は自分でやる羽目になりました。
「亀に頼りすぎていたな……」
しかし、うさぎに雑用を頼もうとしても、「私は自分の仕事で手いっぱいです」ときっぱり断られてしまいました。
数ヶ月後、亀が戻ってきました。しかし、もう以前のように何でも引き受けることはしませんでした。うさぎから「時には断ることが大事だよ」と教えられたからです。
それ以来、猿課長も亀に無茶な仕事を頼むことはなくなりました。
お人好しは損をする。
そして、時には怒ることが有効である。
「この人は理不尽なことには怒るかもしれない」という印象を持たれるだけで、余計な仕事を振られなくなるのだ。